「いけず」という言葉の意味を知っていますか?
アニメでは「ちびまる子ちゃん」や「クレヨンしんちゃん」のセリフで、ドラマでは関西出身の登場人物や舞子さんが「いけず」を使っているのを聞くことがありますね。
なんとなく分かるような気がしても、詳しい意味を知らない方も多いのではないでしょうか?
そこで、この記事では「いけず」の意味や、語源、どこの方言なのかを徹底解説!
さまざまな場面での「いけず」を使った例文もお伝えします。
今まで知らなかった「いけず」の理解を深めて、「いけず」の使い方をマスターしましょう。
ぜひご覧ください。
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目次
1.いけずの意味とは?
「いけず」は標準語で「意地悪」を表す言葉です。
また「意地の悪い様子」や「意地悪な人」のことも指しています。
単に「意地悪」という意味ではなく、さまざまなニュアンスを含むため、標準語の「意地悪」と意味がピッタリ一致するわけではありません。
「意地悪」は「人を困らせる、辛くあたること」を言います。
嫌だなと感じ、笑って許せないほど困ること、絶対にやめてほしいことというイメージです。
一方「いけず」は、一般的に「意地悪」よりソフトな、笑って許せるくらいの困り方をする時に使われます。
軽く相手に警告をする、というニュアンスが合っているかもしれません。
ただ、使い方によっては、相手から嫌がられている、嫌われている場合もあります。
例えば「そんないけずな人とは思わなんだ」(意地悪な人とは思わなかった)は、許してもらえるようにも聞こえますが、時に皮肉を込めて本気で嫌いであることを伝えている場合があります。
「もういけずやねんから」(意地悪なんだから)は、恋人や親しい友人相手と悪ふざけしているニュアンスだと、逆に好かれている意味にもなります。
使い方によって意味が違ってくる、難しい言葉ですね。
また、昔は「悪人」や「ならずもの」という意味でも使われていました。
歌舞伎や浄瑠璃の人気演目「夏祭浪花鑑」に登場する「今も今とていけずたちがわっぱさっぱ」というセリフに「いけず」が使われています。
この演目が江戸時代中期(延享2年)に京都の喜世三郎座にて初演されていることから、「いけず」は江戸時代には「悪者・ならず者」としての意味で使われていたことがわかります。
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2.いけずの語源
「いけず」の語源には2つの説があります。
1つめの説は「行けない」「行かない」という意味の「行けず」「行かず」というもの。
行く道を塞ぎ通さないようにするという意地悪から「行けない」「行けず」、そこから「いけず」が「意地悪」という意味で使われるようになったというものです。
また、一生嫁に行かずに独身でいる女性のことを「行かず後家」「行けず後家」と言います。
お嫁に行けない理由を「性格が悪い」として、「いけず」が「性格が悪い」「意地悪」になったという説があるようですね。
2つめの説は「池之端の芋茎(いけのはたのずいき)」という言葉を略して「いけず」と言った、というもの。
「池之端(いけのはた)」池の端っこに生えている「芋茎(ずいき)」という植物の育成の様子からきています。
「芋茎」はサトイモやハスイモなどの葉と茎の間の部分のことを指します。
夏に収穫されるもので、刺身のツマ、きゅうりと共に酢の物、油揚げと一緒に煮物、豚肉と炒め煮などにして食べられています。
芋茎を細く咲いて乾燥したものは、富山や岐阜では「いもじ」、関東では「ほしずいき」、関西では「わりな」、香川では「ずきかんぴょう」と呼ばれ、料理に幅広く使われているんですよ。
「芋茎」が採れるサトイモやハスイモは、成長する過程で大変多くの水が必要な作物です。
そのため、「芋茎」は周りに生息する他の植物の分まで、池の水分や栄養を吸い取ってしまいます。
このように、他のものを横取りする、意地が悪い植物であるということから、「いけず」が「意地悪」という意味で使われるようになったと言われています。
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3.いけずはどこの方言?
「いけず」という言葉が使われている地域は、主に関西地方です。
京都弁や大阪弁でよく聞く言葉ですが、江戸時代に近畿地方で使われるようになってから、徐々にさまざまな地域へ伝わっていったと言われています。
その中でも、京ことばの「いけず」には独特な趣きがあります。
京都の中心部に長く住んでいる人は「自分の本心を直接言わずに遠回しに伝える嫌味な言い方をする」人が多く「いけず」な人である、と言われてきました。
昔の京都の人は特に地元愛が強く、外の人を田舎者扱いするところから、そう言われていたようですね。
最近では「京都人いけず伝説」という、遠回しに嫌味を言ういけずエピソードが、ネットや書籍で話題になっています。
京都の方は守ってきた伝統を大切にする方が多く、理解ができないよそ者に対して厳しい一面を持っていたようです。
その間違いを遠回しに指摘することが「いけず」と言われる要因だったのかもしれませんね。

4.いけずの類義語表現
「いけず」と同じ意味の言葉を集めてみました。
- 悪ふざけ(人に迷惑をかけるほど、ひどくふざけること)
- 嫌がらせ(人が嫌がることをする、言うこと)
- よこしま(心が正しくないこと)
- 極悪(この上なく心が正しくないこと)
- あくどい(ひどくいやらしい、やり方がひどく不快でたちが悪い)
- 腹黒(心に悪だくみを持っている、暗く意地悪な様子)
- よこしま(心がよくないこと。正しくない様子。有害であること)
- こんじょわる(京都でより相手を非難する場合に使われる。性格が悪くひねくれている様子)
これら以外にも、「意地悪」なことを「親切ではない」という意味で使う場合は、「思いやりがない」「不親切」「つれない」なども、同じ意味の言葉だと言えますね。
類義語ではありますが、意味が一致するわけではありません。
「いけず」は「意地悪」という意味のこれらの言葉をオブラートに包んで遠まわしに伝えるものとして覚えておくといいですね。
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5.いけず ちびまる子ちゃんの口癖
テレビアニメ「ちびまる子ちゃん」や「クレヨンしんちゃん」で、主人公のまるちゃんやしんのすけが「う~ん、いけず~」と言いながら、口を尖らせておしりをフリフリしている姿を見かけますね。
ちびまる子ちゃんは静岡県人、クレヨンしんちゃんは埼玉県人です。
まるちゃんは、静岡のローカルテレビで放送されていた、かし久フーズという会社の「石松そば」のCMを見て「いけず~」を真似したと言われています。
静岡をはじめとする中部地方の石松で、なぜ「いけず」というセリフを使ったCMを流していたのかは不明ですが、もとは関西地方の方言だったものが、だんだんと地方に広がっていった様子が思い浮かびますね。
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6.いけずの使い方と例文
「意地悪」というと相手が嫌がることをするという意味ですが、「いけず」は強く攻撃する場合、例えば「いじめ」「いやがらせ」といった深刻な場合には使いません。
「意地悪」よりも柔らかいイメージで、相手を軽く指摘するように使います。
相手を嫌いな時にも、好きな時にも使える言葉なので、それぞれ例文で見てみましょう。
6−1.いけず使い方と例文①
やんわりと嫌いな相手を否定したい時の使い方です。
「そないにいけずしてると、人に嫌われんで。」
(そんなに意地悪していると、人に嫌われるよ。)
6−2.いけず使い方と例文②
もう1回、相手をやんわりと否定してみましょう。
「あんたのいけずで、嫌な気持ちになってる人もおるんちゃうかな。」
(あなたの意地悪で、嫌な気持ちになっている人もいるんじゃないかな。)
6−3.いけず使い方と例文③
嫌味という意味を含む「いけず」です。
「あの上司、いつもチクチク嫌味を言うてきて、いけずで好きになれへんで。」
(あの上司、いつもチクチク嫌味を言ってきて、意地悪で好きになれないんだよ。)
6−4.いけず使い方と例文④
好きな人といたずらをし合ってじゃれあっているイメージです。
「もう、そないにいけずしたら、嫌いになってまうさかいね!」
(もう、そんなに意地悪したら、嫌いになっちゃうからね!)
6−5.いけず使い方と例文⑤
嫌いきらいも好きのうち。
「あの人はいけずな人なんやけど、そこがたまらのう好きなんどす。」
(あの人は意地悪な人なんだけど、そこがたまらなく好きなんです。)
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7.いけずの意味まとめ
「いけず」は使い方によって、悪い意味や、優しい気持ちを内側に含むものがあり、とても興味深い言葉ですね。
「いけず」という言葉一言でも、語源や使われる地域から、実は深い意味が込められていることが分かります。
それとなく魅力的な使い方ができる「いけず」を、ぜひ普段の会話に取り入れてみてくださいね。